2050食生活未来研究会

2050みらいごはん通信 写真

Vol.10

河南町の野菜から繋がる食を楽しむ場づくり

大阪のビジネス街・北浜にあるイタリアンレストランでオーナーシェフを務める植松将太さん。「河南料理」と銘打った、自身の出身地・河南町の食材を使った料理を提供しています。食材の良さだけでなく、驚きや発見で魅せる料理で人気の同店。その一皿に込めた思いとはー。植松さんにお話をうかがいました。

― プロフィール ―

    植松将太

    高校卒業後に料理専門学校へ進学し、料理の道へ。大阪市内の店舗で修業を重ね、大型店舗で料理長としての経験も積む。2018年に大阪・北浜に「アビタコロ」をオープン。オーナーシェフを務める傍ら、テレビなどメディア出演も多数。

転機となった河南町野菜との出会い

イタリア料理を志し、大阪市内のお店で修業を重ねてきた植松さん。百貨店に入居する大型店舗の料理長を任されていたとき、料理人人生を変えるある出会いがありました。

河南町から届く野菜たち
「大阪市内の人は、大阪で野菜を作っていることを知らない人も多いのでは。意外と有名なものもあるんですよ。」


「納品されてくる食材の中に、私の出身地である河南町の野菜がありました。それが、とてもおいしかったんです。こういった地元の食材を使っていきたいと思いましたが、大きな店舗では、食材の選定やメニュー作りにおける自由度が限られていました。料理人として、いつかは自分の店を持ちたいと考えていたので、それならば小ぢんまりとしてもいいから、自分の目が届く範囲で料理に向き合いたいと思い、開業を決意しました」

河南町出身の植松さんですが、野菜がこんなにたくさん栽培されており、こんなにも味が良いことは全く知らなかったそう。
「河南町では、自分たちが食べるものを少しお裾分けするような形で販売している兼業農家さんがたくさんいらっしゃいます。そのため、作っているものは少量多品種。アビタコロを開業以来、河南町にある道の駅から週に1?2回仕入れています。LINEでやり取りし、動画で状態を確認しながら選んで送ってもらっています。でも、 決まった野菜だけでやろうとすると、仕入れに無理が出てきます。だから、あるものが基本。入ってくるものでメニューを考えて、お客様に提供しています。時折、思ってもいなかったものが送られてきて、『これはどうしよう』と、頭を悩ませることもあります。先日は堅さの残る柿がやってきたのですが、それはピクルスに。また、夏にはキュウリがたくさん採れるそうで、大量に送られてきます。キュウリは麺状にカットして、スープと一緒にお出ししたことも。あるもので考えるって、頭の体操になるんですよ(笑)」

何を食べたかわかる料理が作りたい

河南町の野菜を仕入れ、脳トレの如く、日々メニューを考える植松さん。ただ鮮度が良く、おいしい野菜をお客様に供することだけが目的ではなく、食べる側にも投げかけを行います。

ある日のメニューより

「私が心がけているのは、何を食べたかがわかる料理。食材の味がちゃんとわかるように形を残します。ベーストにすると、どうしても野菜そのものが見えづらくなってしまいます」

加えて、素材が持つ表情を活かしながらも、調理方法や調味料、スパイス使いで自由な料理へと昇華させるのが植松流のこだわりです。
「他ジャンルの料理手法を取り入れてみたり、世界各国のスパイスや食材とかけ合わせてみたり。中華料理の食材やタイやアフリカの調味料を使ったり、バオバブの木のパウダーを合わせてみたことも。普通の野菜を使っているんだけど、アレンジでいかようにも変化する料理でお客様に新たな発見をご提供することも、料理人としての面白さです」

植松さんいわく、考案する料理の数々は「シルクロードのように文化や風土が交わるようなイメージ」なんだとか。そのイメージを形にすべく、コース料理の提供が始まる前には、食材やその日の料理の仕立てをお客様に説明。メニューカードには、食べる側の想像をかき立てるストーリーが表現されています。

物語を読むようにメニューを見る楽しさが。食材の産地、スパイスなどが描かれています。

食材を提供してくれる地元の農家さんに対しては「地元では当たり前の野菜だけれど、ここに来ると違った価値になる」、そんな風に感じてほしいと話します。「河南町の農家さんが店にも訪ねて来てくださいます。『こんなふうに食べるんやぁ、初めて食べたわ』と、おっしゃってくださることが嬉しいです」と植松さんは言います。

河南町に来て、食べて滞在
そんな施設を作りたい

美しい河南町の風景

北浜のお店から河南町の野菜の素晴らしさを発信している植松さん。これから挑戦してみたいことがあるのだとか。
「河南町出身の友人が古民家を活用した宿泊施設づくりを計画しています。このプロジェクトに協力し、地元に滞在しながら食と風景を楽しむ体験を提供したいと考えています。今、河南町に遊びに来てほしいと思っても、泊まる場所がないんです。地元で食事とお酒を楽しんでもらって、ゆっくりしてもらえたら。滞在してこそ気づく、街の良さを外からの視点で再発見してほしいと思っています。また、異業種の方や地域の料理人との交流も広げていきたいです。地元の人からすれば当たり前のことも、外から見れば魅力的なことがたくさんあると思います。まだ構想段階ですが、いずれ実現したい目標です」

プロジェクトを語る植松さん。なんだかとても楽しそうです。



北浜の店から始まった河南町の食材を発信する活動が、どんどんふくらみ、地域を楽しむ食の場づくりへと繋がりつつあります。植松さんなりの“できる限りの表現”を続けながら、河南町と都会を結ぶ架け橋となる未来も、そう遠くなさそうです。

昨日、何食べた?

とても忙しくて551の豚まんを2個です…。いつもはまかないのパスタや新米の時期にはご飯を炊いて食べることもあります。休みの日は家族のために料理をすることも。この前のお休みにはチーズリゾットを作りました。



思い出の食シーン

子どものとき、テレビで見たパラパラチャーハンの作り方を試してみたくなり、作ってみたんです。全然パラパラにならなくて、20分くらい炒めていました。最終的には、焦げてパラパラになったチャーハンが完成。色は茶色くて、苦い味でした(笑)
子どもの時から料理に興味があったんでしょうね。ほろ苦い思い出です。

ABITACOLO(アビタコロ):https://www.abitacolo-works.com/