2050食生活未来研究会

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Vol.12

楽しい!から始める食品ロスの取り組み 「ハピタベ」を知っていますか?

「スーパーの手前どり」。わかってはいるけど、どうしても新しい商品を欲してしまうのが消費者の心情。食品ロスに直結するこの問題を解決すべく立ち上げられたのが「ハピタべ」です。 同プロジェクト代表の濵田岳さんに発足のきっかけやこれからの展望をうかがいました。

濵田岳さん。株式会社ミライデザインGX代表。高知県内のスーパーで約20年勤務後、企画会社へ転職。コロナ禍をきっかけに独立し、ゲーム感覚で食品ロスを減らすプロジェクト「ハピタべ」を発足。

恵方巻が大量に捨てられる スーパーの正論は世間の非常識?!

約30年前、高知県にあるスーパーに新卒で入社した濵田さん。部門の担当者からバイヤー、店長を経て本部の企画職に。トヨタの『5Sカイゼン』や生産管理システムである『かんばん方式』を取り入れ、企業の問題改善や経営にまつわる数値管理に携わりました。
「高知県は少子高齢化が進んでいて、当時、“日本の10年先の縮図”と言われていました。生産人口が少なく、内需を食い合う状況。スーパーは生き残りをかけた戦いを強いられていて、食品ロスの管理も経営戦略の一つでした」

そんなとき、濵田さんはテレビのニュース番組で大量に廃棄される恵方巻を目にします。
「当時は、品切れさせてはダメというのがスーパーの正論でした。いつ来ても商品があることはスーパーとして当然のことだと考えていました。ところが、2月4日になれば廃棄される恵方巻を見て『もったいない。捨てるのは良くない』と話す若いお母さんを見て、これまで自分たちが『いい』と思ってやってきたことが良くなかったのではと考え始めました」

しかし、「良くない」とわかっていても、すぐに仕組みを変えられない事情もありました。
「店長時代に国の方針である“手前どり”を店でも推奨しましたが、お客様からのちょっとしたクレームにつながりました。お店で消費期限が近いものを販売しても、家庭で消費されなかった場合、結局は同じ食品ロスであり、全体量を減らすことにはなりません。正しいことをお願いしているつもりでしたが、必ずしも成功するとは限らないことを経験しました」

良いことであっても人を動かすことが難しいこともある、そんなことを強く感じたそうです。

ハピタべ発足!
環境貢献にゲーム要素をプラス

その後、濵田さんはスーパーを退職し、企画会社へ転職。一度は食品ロスの問題から遠ざかりますが、コロナ禍で広告案件がストップしたことを契機に、改めてこの問題に向き合います。知人や家族の後押しもあり独立。株式会社ミライデザインGXを設立し、「ハピタべ」の立ち上げに奔走しました。

 「ハピタべ」とは、廃棄が近い商品に貼られたシールを集めると、ガチャガチャを回せるというゲーム感覚で取り組む食品ロスを削減する仕組み。現在、全国で11企業・約100店舗が「ハピタべ」を導入しています。スーパーで敬遠されがちな“手前どり”に、“ガチャ”というお楽しみを加えたことで若いファミリー層から人気を得ているそう。

導入されている店舗の売り場での様子。

「若い世代の方々は、物を大切にすること、環境問題への関心が高いことから、食品ロスの取り組みと親和性が高いと感じていました。そこに、子どもが好きなゲーム要素を入れることで楽しくて価値のある仕組みになりました。また、スーパーのメイン顧客層は60代以上と言われており、私がスーパーにいた時代もそうでした。少子高齢化の中、より多くの若い世代にスーパーに足を運んでもらい、ファンになってもらうためには家族で来店したくなるアクションが必要だと思っていたんです。実際に、導入店舗では若いファミリー世代の来店が増えています」

企業の利益率も向上!

加えて、スーパー側にとっての大きなメリットも生まれています。
「利益率の低いスーパー業界において、食品ロスは経営を逼迫する原因でもありました。ハピタべの導入によって利益率が0.2〜0.3%程度向上し、持続可能な取り組みとして回り始めています。お客様は楽しさと環境教育の面でハピタべを利用し、企業側は利益率の向上という点でハピタべを導入する。それぞれの目的は違えど、食品ロスを減らすゴールは一緒なんです。皆が同じ目的でなくても成立する仕組みというところも、ハピタべの面白い部分だなと思います」

しかし、社会的に意味のある良いことであっても、続けていくには大変なことが多いのだとか。ただでさえ業務が多いスーパーの現場。その中で新たなオペレーションをスタッフにお願いすることには、反発もたくさんあったそう。そこで鍵になったのが「お姉さん」と濵田さんは言います。

シールを貼るひと手間が現場のスタッフにとっては大きな負荷に。

「実際に導入が決まった店舗に何度も足を運び、スタッフの方々と対話を重ねてきました。こんなときに頼りになるのが長年仕事をしていらっしゃるパートスタッフの方々でした。お姉さん方には、ダメな時はダメ!と一喝されますが、力になってくれると、これほど強いパートナーはいません。『あんたがそこまで言うなら』と、最後は協力してくださいました。導入が決まった店舗には必ず足を運び、現場で一緒に作業をします」

泥臭いほどに、現場主義を貫く濵田さんの姿勢が現場スタッフの心を動かし、食品ロス削減の目標にみんなで向き合っています。

ハピタべがなくなる世界を目指して

現在進行形で拡大中の「ハピタべ」ですが、濵田さんには大きな目標があります。
「今はまだ100店舗ですが、日本のスーパーマーケットの約2割にあたる4,000〜5,000店舗への普及を目指し、世の中への影響力を高めていきたいと思っています。その上で、ハピタベという特別な名前や仕組みがなくても、食品ロス削減が当たり前になる社会にしたいんです。『スーパーの商品は前から取るのがかっこいい』という文化が根付けば最高。最終的には、ハピタべの仕組みがなくなって、自分の仕事がなくなることが理想ですね」

では、濵田さんは何をするの?と投げかけると、こんな返答が。
「将来的にはカスタムした車で全国を回り、楽しみながら食育や食品ロス削減の広報活動を行うことが夢です。まあ、趣味のサーフィンを全国各地でできるっていう、思惑でもありますが(笑)」

 社会貢献と遊びゴコロのMIX。これこそ「ハピタべ」の精神。数年後、サーフボードを積んだ車をスーパーで見かけたら…。それはきっと濵田さんですね(笑)

各地でSDGs関連のアワードを受賞



ハピタベは導入先のスーパーと共に、環境にまつわる賞を多数受賞しています。 新潟県の株式会社ウオロクが「新潟県SDGsアワード」を、静岡県の株式会社ヒバリヤが「静岡県SDGsビジネスアワード」で優秀賞を受賞。今年1月には愛知県にある株式会社アオキスーパーとともに「2026愛知環境賞」で優秀賞を受賞しました。

昨日、何食べた?

父、高齢の叔母、子どもたちの三世代でファミレスに行き、チキンステーキを食べました。叔母は「子どもが食べている姿を見るのが楽しい」と。子どもはお年玉をもらうのが目的だったけど、それでも家族で集まれる時間っていいなぁと思いました。



思い出の食シーン

30歳のときに母親が突然亡くなり、その日の夕食にかぼちゃの煮付けが作ってあったんです。私はかぼちゃの煮付けが嫌いだったのですが、このときは、泣きながら食べた思い出があります。